2012年
2019年
2020年
見終わって私の言葉はしばし仮死状態に陥りました。
でもこの映画にひそむ沈黙から言葉はふたたびよみがえるでしょう。
谷川俊太郎|詩人
邪悪を射抜く少年のまなざしに、魂を奪われ、ただ立ち尽くすしかない。
小川洋子|小説家
生き物の本質に善悪の基準なんてないだろう。
生き残るために「人間性」は空虚な言葉になって、非情で残虐な世界に埋没していく。
それでも、人が生き続ける限り、忘却の彼方から言葉が生き返る瞬間を、僕らは最後に目撃するだろう。
奈良美智|画家・彫刻家
映画館のスクリーンで観るべき映画。その映像美の中に目を背けてはいけない「人間の正体」がある。
戦争が人間を変えるのではなく、元々人間が残忍だから戦争も虐殺も起きるのだ。筆舌に尽くしがたい醜悪さを突きつける、東欧の芸術作品らしい陰惨で濃厚な魔術的物語。
深緑野分|作家
美しく完璧なショットが炙り出すのは、人の皮を被った動物の姿。
この映画でしか味わえない圧倒的な余韻がある。
李相日|映画監督
生き延びることそれ自体が理不尽であるような最悪な状況。
不条理と狂気にまみれた少年の日々を直視させる映像美が憎い。
濱野ちひろ|ノンフィクションライター
戦争が引き起こす人間性の破綻、その連続から目を背けたくなりつつも、美しい白黒の映像美と主人公の少年による無言のリアルな演技で最後まで釘付けになりました。
ピーター・バラカン|ブロードキャスター
これまで最も不快な戦争体験は「炎628」だったが、本作はそれに匹敵する。時代に流されていく孤独な少年の流刑。いつかは幸せになれると、微かな期待をしつつの169分は、見事に裏切られる。少年の無垢を彩る美しいモノクロ映像と、戦火の吐瀉物や血痰とのコントラストが続く。ところが、不思議なことに後半には戦争色に全てが染まる。戦時下、どこにも光はなく、色もない。灰色に染めあげられていく無垢なる“モノクロームの少年”。もう子供でも大人でも戦士でもない。彼こそが“戦争”そのものなのだ。
小島秀夫|ゲームクリエイター
凄まじい映像と物語。
普通の人たちの内なる差別、悪意、残虐、あらゆる「業」が、少年にここまでの仕打ちをするのか。長尺を忘れて、心の中で叫び続けた。この機会を逃さずに。
松尾貴史|タレント
川本三郎先生の書評で原作小説を知り、読みました。恐ろしい物語ですが、〝知っている地獄〟のような不思議な懐かしさを感じました。映画と小説の両輪で理解を深めてほしい作品です。
桜庭一樹|作家
※書評=『走れナフタリン少年』(川本三郎/北宗社、中公文庫)所収の「ひとりぼっちの逆十字軍」
表現力豊かなライティングとともに、これらモノクロームの映像は見事と言うよりほかにない。素晴らしい。
ゴールドダービー|Gold Derby
イェジー・コシンスキの「ペインティッド・バード」はヴァーツラフ・マルホウル監督によって最高の形で映像化された。
ザ・ハリウッド・リポーター|The Hollywood Reporter
『異端の鳥』は非常に没入感があり、力強く、不屈の視線を持っている。
ヴァラエティ|Variety
堂々たる傑作。この映画を観られたことに心から感謝したい。
ザ・ガーディアン|The Guardian
疑う余地のないほど見事なモノクロ叙事詩的映画。本作の容赦ない残忍な描写と倒錯を十分に説明するのは難しいが、アンドレイ・タルコフスキー『僕の村は戦場だった』、ロベール・ブレッソン『少女ムシェット』、またはエレム・クリモフ『炎628』などを見た人は、この恐ろしさがどのようなものか分かるかもしれない。
リトル・ホワイト・ライズ|Little White Lies
田舎の村々を通り抜け、少年は人間の最も暗い真実と最も崇高な瞬間を目撃する。
ここ数年で最も過酷で価値のある映画の1つ。撮影監督であるスムットニーの仕事は本当に完璧だった。最初から最後まで無駄なショットが一つとしてない。この絶妙な美しさを通して、戦争の現実が映し出される。この映像は、時間が経っても心に残っているだろう。
フィルム・スレット|Film Threat
【順不同・敬称略】