『ミッション:インポッシブル』(96)、『スカーフェイス』(83)、『アンタッチャブル』(87)など数々の屈指の名作を手掛けた伝説的映画監督、ブライアン・デ・パルマが、久しぶりスクリーンに戻って来た。日本での劇場公開作品として『パッション』(12)以来、約8年振りとなる本作で彼が作り上げたのは、ISISメンバーのタルジに相棒刑事を殺され、正義を追い求めるコペンハーゲンの警官・クリスチャン(ニコライ・コスター=ワルドー)が、ヨーロッパを舞台に事件解決のため猛然と突き進む、予測不能のサスペンス・アクションである。
恐怖と疑心に悩まされる世界で、クリスチャンは、同僚警官のアレックス(カリス・ファン・ハウテン)と共にタルジ(エリック・エブアニー)を追い詰めるミッションに乗り出すが、ISISメンバーを罠に嵌めるための人質としてタルジを利用しようとする悪徳CIAエージェント・ジョー(ガイ・ピアース)の計画に、知らず知らずのうちに巻き込まれていく。ひとつの殺人から始まった事件が、デンマーク警察、米国CIA、そしてISISたちの思惑が絡み、三つ巴の様相をみせ、やがて国際テロ事件へと変貌していく。それはクリスチャンとアレックスにとって復讐を果たすためだけの戦いでなく、多くの命を守るための戦いとなっていくー。スカンジナビアの凍るようなデンマークの街から、太陽の降り注ぐスペインの風景までを舞台に、キャリア集大成とも言える本作でデ・パルマ監督は、対立するあらゆる勢力の壮大な戦いを見事に描き、クライマックスの瞬間まで、観る者に息をもつかせない!
主人公の刑事クリスチャン役を演じたのは近未来アクション『オブリビオン』や、TVドラマシリーズで、世界中で大ヒットしたアクション・スペクタクル巨編「ゲーム・オブ・スローンズ」のジェイミー役で人気を博したニコライ・コスター=ワルドー。また同じく「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズで光の王の女司祭のメリサンドル役を演じたカリス・ファン・ハウテンが、主人公と共にテロ組織を追う相棒刑事アレックス役を演じ、謎のCIAの男・ジョーを『ハート・ロッカー』や『英国王のスピーチ』など文芸作品からエンターテイメント作品まで着実に国内外でキャリアを築いているガイ・ピアースが演じている。
デンマーク・コペンハーゲンで起こった殺人事件。
やがてそれは、警察、CIA、ISISが複雑に絡む
巨大な国際テロへと変貌していく―
デンマーク・コペンハーゲンの刑事クリスチャン(ニコライ・コスター=ワルドー)とラース(ソーレン・マリン)は、市内パトロール中にある殺人事件に遭遇。クリスチャンは、殺人犯タルジ(エリック・エブアニー)を取り押さたが、隙を衝かれた際に同僚ラースが重傷を負う。さらには謎の男たちにタルジを連れ去られてしまう。拳銃の不携帯というミスでラースを危険に晒したクリスチャンだったが、自身への失望と怒りから、上司からの謹慎処分を無視、同僚の女刑事アレックス(カリス・ファン・ハウテン)と共に元特殊部隊員の過去を持つタルジを追う。その頃、米国CIAの男・ジョー(ガイ・ピアース)らに拉致されたタルジは、家族の命と引き換えに、ある危険なミッションを命じられていた―。
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クリスチャン
ニコライ・コスター=ワルドー1970年生まれのデンマークの俳優。名門、デンマーク国立演劇学校の卒業生。数々の受賞歴を誇るHBOの大人気シリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」で、ジェイミー・ラニスター役を演じ高い評価を得る。このシリーズは、ジョージ・R・R・マーティンによるベストセラー小説「氷と炎の歌」を基にしており、2018年には3度目となるエミー賞ドラマ部門の作品賞を受賞。それに続き、ニコライはプライムタイム・エミー賞、全米俳優組合賞、放送映画批評家協会賞、ピープルズ・チョイス・アワードにノミネートを果たした。2019年のエミー賞では作品として圧巻の12部門での受賞を果たし、ニコライも助演男優賞にノミネートされた。
2014年、アカデミー賞R受賞歴のあるスザンネ・ビア監督によるデンマーク映画『真夜中のゆりかご』で主演し、トロント国際映画祭でプレミア上映された。同作は、悲劇が正義と不正の境界線を曖昧にさせるとき、まともな人間がどれだけ先に進めるかという疑問を投げかけた。また、Netflixの『スモール・クライム<未>』(17)や、『ブラッド・スローン』(17)にも主演している。スペクタクル・ファンタジー『キング・オブ・エジプト』(16)ではジェフリー・ラッシュやジェラルド・バトラーと共演し、『おやすみなさいを言いたくて』(13)ではジュリエット・ビノシュの夫役を務めた。その他の出演作に、ニック・カサヴェテス監督作『ダメ男に復讐する方法<未>』(14)、ギレルモ・デル・トロ製作総指揮の『MAMA』(13)、トム・クルーズ主演のジョセフ・コシンスキー監督作『オブリビオン』(13)などがある。
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アレックス
カリス・ファン・ハウテン1976年生まれのオランダ出身の女優。HBOの大人気シリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」での女司祭・メリサンドル役で最も知られている、ヨーロッパで最も有名な女優の1人。数々の受賞歴を誇る同作で、全米俳優組合賞のアンサンブル賞に幾度もノミネートされている。ダコタ・ファニングやガイ・ピアースと共演したマルティン・コールホーヴェン監督によるウェスタン・スリラー『ブリムストーン』(16)は、ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞と、ロンドン映画祭の作品賞にノミネートを果たした。母国のオランダでは数々の受賞歴を誇り、映画とテレビの両方で活躍している。
2006年、オランダ映画界で最も興行的に成功したポール・ヴァーホーヴェン監督の傑作戦争スリラー『ブラックブック』(06)で主役を務め、国際的な注目を集める。同作での、第二次世界大戦中にナチス占領下のオランダで抵抗運動のためにゲシュタポ本部に潜入したユダヤ人の歌手、ラヘル・シュタイン役で英国アカデミー賞にノミネートされた。トム・クルーズと共演したブライアン・シンガー監督作『ワルキューレ』(08)に出演したのち、『THE HAPPY HOUSEWIFE(原題)』(10)で新記録となる5度目のGolden Calf賞(オランダアカデミー賞)を受賞し、“史上最高のオランダの女優”に選出された。『BLACK BUTTERFLIES(原題)』(11)ではトライベッカ映画祭の最優秀女優賞に輝いている。
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ジョー
ガイ・ピアース1967年生まれのオーストラリアの俳優。テレビシリーズ『ネイバーズ』の主演で人気者となり、1990年にオーストラリアのミュージシャン、ジョン・ウォーターズと共演した「Heaven Tonight」で映画デビュー。1994年にはテレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィーヴィングと共演したロード・ムービー『プリシラ』で能天気なドラァグクイーンを演じて高い評価を得た。1997年公開の『L.A.コンフィデンシャル』でハリウッドデビュー。同作品は、同じくオーストラリア出身ラッセル・クロウと組んだ。作品はアカデミー作品賞にノミネートされ、名だたる名優たちを相手に堂々とした演技を披露し、ピアース自身も高い評価を得た。
その後代表作のひとつとなった、クリストファー・ノーラン監督の『メメント』(00)以降、コンスタントにハリウッド映画に出演し、古典SF映画のリメイク『タイムマシン』(02)や法廷サスペンス『英雄の条件』(00)、アダム・サンドラー主演のファンタジーコメディ『ベッドタイム・ストーリー』(08)などにも顔を出している。2006年に出演したシエナ・ミラー主演の『ファクトリー・ガール』では実在したアーティストアンディ・ウォーホルを演じている。2009年に出演したキャスリン・ビグロー監督の『ハート・ロッカー』と、2010年に出演したトム・フーパー監督の『英国王のスピーチ』は両方ともアカデミー作品賞を受賞しており、2年連続でアカデミー賞を受賞した作品に出演した。2013年にはロバート・ダウニー・Jr主演の人気ヒーロー作品『アイアンマン3』や『エイリアン:コヴェナント』(17)に出演するなど、文芸作品からエンターテイメント作品まで、現在も着実にキャリアを築いている。待機作としてヴィン・ディーゼルと共演の『Bloodshot』(20)がある。
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ラース
ソーレン・マリン1964年、デンマーク生まれの俳優。1988年から4年間、デンマークのオーデンセ劇場で芝居を学び、「Fernando Krap」(92)、「Mary Frankenstein」(94)などの舞台俳優として注目を浴びる。98年以降は、映画やTVシリーズにも進出、コメディドラマなどにも数多く出演している。2007年、犯罪TVドラマシリーズ「THE KILLING/キリング」にイエン・マイヤ刑事役で出演。欧州にとどまらず世界中で大ヒットとなり、アメリカでもTVシリーズ「キリング/26日間」(11)としてリメイクされ、日本でも一世を風靡した。近年は、トビアス・リンホルム監督ともタッグを組むことが多く、海賊との人質交渉をリアルに描いた『シージャック』(12)や戦場と法廷を舞台に、正義と命の尊さを問いた『ある戦争』(15)がある。その2016年には、デンマーク映画俳優への最高峰の賞である、ラウリッツェン賞を受賞している。最新作として、ジェラルド・バトラー共演の『バニシング』(20年1月24日公開)が控えている。
監督:ブライアン・デ・パルマ
映画業界トップクラスの俳優たちと仕事をしていることで知られる世界レベルの映画監督。『悪魔のシスター』(73)で初めて成功し、彼のトレードマークである盗撮スタイル(voyeuristic style)の舞台を作った。彼は、ポール・シュレイダーからジョン・ファリス、オリバー・ストーン、そして他の多くの作家まで、有名なタイトルに取り組んできた。
1963年までさかのぼる多くの業績の中で、当時20歳のロバート・デ・ニーロの映画デビュー作にもなった『御婚礼/ザ・ウェディング・パーティー<未>』(69)を監督。1976年、シシー・スペイセク主演でスティーブン・キングの小説を基に映画化したサイコホラー『キャリー』が、彼の最初の大きな商業的成功となった。これまでに、デ・パルマはロバート・デ・ニーロ、ケビン・コスナー、ショーン・コネリー出演の『アンタッチャブル』(87)、トム・クルーズ主演『ミッション・インポッシブル』(96)、アル・パチーノ主演『スカーフェイス』(83)を含む30以上の映画を監督。
ジョン・トラボルタ、メラニー・グリフィス、トム・ハンクス、ショーン・ペンなどのスターを監督しており、彼に影響を与えた監督、特にアルフレッド・ヒッチコックの作品を思い出させることで有名。デ・パルマが監督した俳優のうち3人:シシー・スペイセク(最優秀主演女優『キャリー』)、パイパー・ローリー(最優秀助演女優『キャリー』)、ショーン・コネリー(最優秀助演男優『アンタッチャブル』)がオスカー賞にノミネートされた。
FILMOGRAPHY
*公開年度順
- ロバート・デ・ニーロのブルーマンハッタン/BLUE MANHATAN2 黄昏のニューヨーク Greetings (1968)
- 御婚礼/ザ・ウェディング・パーティ The Wedding Party (1969) ※シンシア・モンローとフィルフォード・リーチと共同監督
- Dionysus (1970)
- ロバート・デ・ニーロのブルーマンハッタン/BLUE MANHATAN1 哀愁の摩天楼 Hi, Mom! (1970)
- Get to Know Your Rabbit (1972)
- 悪魔のシスター Sisters (1973)
- ファントム・オブ・パラダイス Phantom of the Paradise (1974)
- 愛のメモリー Obsession (1976)
- キャリー Carrie (1976)
- フューリー The Fury (1978)
- 悪夢のファミリー The Home Movies (1978)
- 殺しのドレス Dressed to Kill (1980)
- ミッドナイトクロス Blow Out (1981)
- スカーフェイス Scarface (1983)
- ボディ・ダブル Body Double (1984)
- Wise Guys (1986)
- アンタッチャブル The Untouchables (1987)
- カジュアリティーズ Casualties of War (1989)
- 虚栄のかがり火 The Bonfire of the Vanities (1990)
- レイジング・ケイン Raising Cain (1992)
- カリートの道 Carlito's Way (1993)
- ミッション:インポッシブル Mission: Impossible (1996)
- スネーク・アイズ Snake Eyes (1998)
- ミッション・トゥ・マーズ Mission to Mars (2000)
- ファム・ファタール Femme Fatale (2002)
- ブラック・ダリア The Black Dahlia (2006)
- リダクテッド 真実の価値 Redacted (2007)
- パッション Passion (2012) *ノオミ・ラパス、レイチェル・マクアダムス
- ドミノ 復讐の咆哮 Domino (2019)
製作 | タラ・モーロス『ジョン・ウィック』 |
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脚本 | ベッター・スカヴラン『コン・ティキ』 |
撮影 | ホセ・ルイス・アルカイネ『私が、いきる肌』 |
編集 | ビル・パンコウ 『ブラックブック』『エージェント・ウルトラ』 |
美術 | クリステル・ドトレモント、 カート・ローエン |
音楽 | ピノ・ドナッジオ『殺しのドレス』 |
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